「まずやる」「すぐやる」

心臓血管外科医として国内でも最多に近い手術件数を経験し、天皇陛下(現・上皇陛下)の執刀医として知られる天野篤医師。

しかし、医師としての素晴らしい実績の基礎は、困難に躓き苦い思いを味わった20代にあったといいます。いまの自分をどう打破するか――人生の節目にある方々へ、天野氏からのメッセージをお届けいたします。

〈天野〉
失敗のない人生など、まずありません。思うに任せない人生の中で夢を叶えるには、コツコツ努力するしかない。自分の得意分野を見極め、鑿とハンマーで分厚い岩盤を穿っていくように、コツコツと道を切り開いていくしかないというのが、躓きから20代をスタートした私の実感です。

その地道な努力の効果を少しでも高めていくため、若い方々に身につけていただきたい習慣が、

「まずやる」「すぐやる」です。

仕事や勉強では苦手なことを後回しにしてしまいがちです。しかし、それを繰り返している限り苦手はいつまでも克服できず、夢を手にすることも叶いません。これをやらなければ次へ進めないという強い決意を持って「まずやる」ことが大事です。

「すぐやる」とは、席に着いたら脇目も振らず、とにかくやるべき仕事や勉強に取りかかることです。いまはスマホやゲームなど、夢の妨げとなる誘惑がたくさんあるので、そうしたものに振り回されないためにも、やるべきことを「すぐやる」習慣をつくることが大事なのです。

私も手術では迷うことなく「まずやる」「すぐやる」を心掛けてきました。手術が上手くなったのは、間違いなくこの2つの習慣のおかげだと確信しています。

こうした習慣の原動力となり、人生を大きく左右するのが、夢を叶えようとする熱量です。

このフィールドに立ったからには、絶対自分のものにしてみせる。そうした気概を持ち、自分がこの世に生を享けたことへの責任を果たしていくのが人生だと私は思います。たとえいま、どんな最悪のピンチの中にあっても、諦めないで挑戦を続けてほしいのです。

最後に、20代を生きる若い方々に、私がお世話になった亀田総合病院の理事長からいただいた言葉を贈ります。

「最大のピンチと思った時こそ、その次がチャンスなんだ」

※(本記事は『致知』2019年8月号 連載「二十代をどう生きるか」より一部抜粋したものです)