【松下幸之助の座右の書】商人の道

【問(ある商人)】
私は、いつも品物を売ったり
買ったりすることを
生業としていながら、
商人としての正しい道の意味を
よく理解できずにいる。

主にどんな点に注意して商人として
世渡りしていったらよいのだろうか。

【答】
遠い昔、自分のところで余った物を、
不足している物と物々交換することで
相互間に流通させたのが、
商人の発祥(おこり)とのことだ。

商人は、銭勘定に精通することで
日々の生計を立てているので、
一銭たりとも軽視するようなことを
口にしてはならない。

そうした日々をこつこつと
積み重ねて富を貯えるのが、
商人としての正しい道である。

その場合の?富の主人?は
誰かというと、世の中の人々である。

買う側と売る側という
立場の違いはあっても、
主人も商人の自分も互いの心に
違いはないのだから、
一銭を惜しむ自分が気持ちから
推し量って、売り物の商品は
大切に考え、決して粗末に扱わずに
売り渡すことだ。

そうすれば、買った人も、
最初のうちは金が惜しいと
思うようなことがあっても、
商品のよさが次第にわかってくると、
金を惜しむ気持ちは
いつの間にかなくなるはず。

金を惜しむ気持ちが消え、
いい買い物をしたという思いへと
自然に変わるのである。

◎経営の神様・松下幸之助の座右の書
『石田梅岩「都鄙問答」』
(石田梅岩・著、城島明彦・現代語訳)