女優 樹木希林が残した言葉

『おごらず、人と比べず、面白がって、平気に生きればいい』女優 樹木希林が残した言葉


(1)

おごらず

人と比べず、

面白がって、

平気に生きればいい



(2)

木が集まって希な林を作る。

人が集まって何かが生まれ育つという意味よ。

それに語調にキが続いて、

私らしくてズッコケてるでしょう。



(3)

人の値うちは己の役をどう見つけ、

どう果たすかによって決まってしまうようです。

だとしたら、

わたしらの此の世の役目は

何なのでしょうか。



(4)

人を蹴落としてまで生き残りたいとか、

そういうエネルギーはないんですよ。

そうですか、じゃあ、

順番ということで、

すいませんがお先に、

という気持ちですかね。



(5)

割烹着を掛ける役とか

おばあさん役ってのは好きね。

弱いでしょ。

エリートでない人間、立場や、

生命にひけめを持っている人間、

そういうのが、

がんばって生きているってのが好きなのね。



(6)

息をしていた者が突然息をしなくなる、

という嘘のような

ほんとうの出来事に出会ったとき、

どんな人でも心を動かされます。

それは一瞬でも人びとに「和」をもたらします。

それはどんな教育にも勝るものです。



(7)

地に根を張らなきゃ花も咲きませんし、

散りもしません。

「あだダ花」といえどもけなげに散れば、

少しは人の心を動かすかもしれません。



(8)

自分の姿というのは、

なかなか見えにくいものです。

まして自分の中にそれをかくしたいと

思う心があるとなおさらです。



(9)

「世間」という鏡は、

それほど浄明とはいえません。

時代時代の好みや動きによって、

大かれ少なかれでこぼこしています。

ですから時として、

大して美しくないことでも

思いがけず美化されたり、

大して醜くくなくても、

目をおおいたくなるほど

ひどく写ることもあります。



(10)

ジタバタすることはないのです。

否定もせず、無視もせず、

有頂天にもならず、

悪意も善意もひっくるめて

承知すればいいのです。



(11)

腹黒いという言葉がありますが、

私の独断と偏見でいえば、

多分腸の悪い人のことをいうんだろうと思います。

腸が悪いと働くのがおっくうになります。

楽をしてうまい汁を吸おうと

思うようになるのは当然だと思うのです。

案外便秘の人も腹黒いかもしれません……。



(12)

腸も悪くなく便秘もないのに

私も時どき腹黒くなります。



(13)

私流の解釈をすれば、

宇宙の流れに順応していないものが

悪なのです。

いや、

このように決めてかかるのも

悪なのかもしれません。



(14)

何故その人が癌になるのか。

何故その人が殺されるのか。

何故その人が殺すのか。

何故その人が落ちる飛行機に乗るのか。

何故その人が出世するのか。

何故その人が遊び好きなのか。

何故その人がホモなのか。

何故その人が酒乱なのか。

何故その人がのたれ死にを好むのか……。

なぜ、なぜ、なぜ、と思うのです。



(15)

「有難い」という言葉があります。

かえり点をうって

「難有り」とも読めます。

もとのインドではどう言ったのか知りませんが、

中国に渡ってこういう字をあてて、

それを日本で読みくだし、

誰がどう解釈したか私たちの

日常語になってしまいました。

ふと

「難有て……、有難し」

と思ってみました。