夏目漱石の言葉

『真面目に考えよ。誠実に語れ。摯実に行え。汝の現今に播く種は、やがて汝の収むべき未来となって現わるべし』夏目漱石の言葉


(1)

表面を作る者を

世人は偽善者という。

偽善者でも何でもよい。

表面を作るという事は

内部を改良する一種の方法である。



(2)

金を作るにも

三角術を使わなくちゃいけないというのさ。

義理をかく、人情をかく、恥をかく、

これで三角になるそうだ。



(3)

人間はね、

自分が困らない程度内で、

なるべく人に親切がしてみたいものだ。



(4)

ナポレオンでもアレキサンダーでも、

勝って満足したものは一人もいない。



(5)

離れればいくら親しくっても

それきりになる代わりに、

一緒にいさえすれば、

たとい敵同士でも

どうにかこうにかなるものだ。

つまりそれが人間なんだろう。



(6)

真面目に考えよ。

誠実に語れ。

摯実に行え。

汝の現今(げんこん)に播く種は

やがて汝の収むべき未来となって現わるべし。



(7)

ある人は十銭をもって

一円の十分の一と解釈する。

ある人は十銭をもって

一銭の十倍と解釈する。

同じ言葉が人によって高くも低くもなる。



(8)

愛嬌というのはね、

自分より強いものを倒す柔らかい武器だよ。



(9)

たいていの男は意気地なしね、

いざとなると。



(10)

わざわざ人の嫌がるようなことを云ったり、

したりするんです。

そうでもしなければ僕の存在を

人に認めさせる事が出来ないんです。

僕は無能です。

仕方がないからせめて

人に嫌われてでもみようと思うのです。



(11)

人間は角があると

世の中を転がって行くのが

骨が折れて損だよ。



(12)

世の中に片付くなんてものは

殆どありゃしない。

一遍起った事は何時までも続くのさ。

ただ色々な形に変るから、

他にも自分にも解らなくなるだけの事さ。



(13)

自分のしている事が、

自分の目的(エンド)になっていない程

苦しい事はない。



(14)

自分の弱点をさらけ出さずに

人から利益を受けられない。

自分の弱点をさらけ出さずに

人に利益を与えられない。



(15)

馬は走る。

花は咲く。

人は書く。

自分自身になりたいが為に。