「今あるしあわせ」
以前,インドの貧しい村の家でお昼をご馳走になったことがありました。
バナナの葉っぱのお皿にはご飯、ヤシの実をくりぬいたお椀にはカレー。
デザートもチャイも、心のこもったもの。
3世代家族がワイワイと集まり、カレーの食べ方を教えてくれました。
そのおいしかったこと!
私はお礼に、街から買ってきたお菓子を贈ろうとしたところ、そこのおばあちゃんがこう言ったのです。
「なにも要らないよ。あなたがここに来てくれただけで十分」
帰り際に、小学生の娘さんが、野原の白い花で編んだリースを、恥ずかしそうに差し出しました。
花を摘み、時間をかけて作った、その贈り物は、どんな高価なものよりもうれしく、思わず涙が、ぽろぽろ…
私が持ってきた街のお菓子が、なんだか恥ずかしくも思えてきたのでした。
その家族は、まるで「私たちはもう十分、たくさんのものを持っている」と伝えているようにも感じられました。
「持っていない」
「足りない」
「満たされない」
という気持ちがあると、それをなにかで埋めようと、必死になります。
人と比べているからです。
なにかを買ったり、ぜいたくをしたりすることで、満たされたような気持ちになります。
でも、それは大きな勘ちがい。
本当の幸せは、お金では買うことができないのです。
「私は持っている」
「もう十分」
「満たされている」と、足元にあたりまえにある価値に気づけたら、どれだけの人が幸せになることでしょう。
まわりの人に目を向けるのではなく、自分の心に正直に向き合うことが、幸せへの近道。
幸せとは、どんな状態かではなく、感じ方の問題なのです。
あなたは、どんなことに喜びを感じますか?
家族がいること。
友達がいること。
元気で働けること。
ご飯をおいしく食べられること。
夕陽がきれいだったこと。
人を愛せること…
いまでも、十分、幸せなはずです。
私たちは、たくさんの価値あるものを持っているのですから。
出典元:(よわむしの生き方 有川真由美)