課長の宮崎(仮名)はある日、専務に呼ばれて、
「地方営業所の立て直しをやってくれ」と指示された。
その営業所は立て続けに五人も所長が替わっていた。
そのうち三人は、そのまま会社を去っている。
「あの人、あそこに行くの? 左遷だね」
社内の誰もがそう言った。宮崎自身もそう思った。
帰宅して妻に話した。
「どうしてあなたがあんな所へ」
と泣き騒ぐかと思ったら、ニコニコ笑って、
「難しい営業所らしいけど、
何とかなるわよ。行くのが楽しみ」
と言った。
「だってあなた、いまの会社が好きなんでしょ。
社長さんを尊敬してるんでしょ」。
のしかかっていた暗雲がいっぺんに吹き飛んだ。
宮崎の覚悟は決まった。
就任三年、宮崎はメキメキ業績を伸ばし、売り上げで
全営業所のトップとなり、所長会議で表彰された。
これは左遷だ、と思い込んだままなら、
こういう結果にはならなかったに違いない。
妻のひと言を契機に、
宮崎は視座を高めることで自暴自棄に陥らず、
運命を好転させたのである
人材育成家・染谷和巳氏が著書に書いている話である。